2014年5月21日水曜日

セイバーメトリクスな数字

打率、ホームラン、打点、勝ち星、得点圏打率というよく見る数字に比べて、出塁率や長打率、あるいはOPS(ここらへんは割りと浸透してるのかな?),XR,Fip,Dip,IsoD,IsoP,LOB%……とかいったセイバーメトリクス的な数字は市民権をまだまだ得れていない感じがあります。人によってはセイバーメトリクスの数字は実際の試合を見ていない数学オタクがでっち上げたもんでそんなのには意味が無いとかいう人もいたり。

じゃあそもそも、打率ってそんなに自然な数字なの?という話がでてきます。何気なく使っている打率ですが、あれの計算方法も全ての安打を無差別に足し算するという作業をしていますから、当然恣意的な指標です。しかもフォアボールはカウントされませんから、フォアボールを選ぶことは打率を上げると言う観点からいうと全く無意味です。ですから打率だけで打者の能力を図ろうとするときには、そういった消えた要素があることを考えていないと、間違った結論を導く可能性があります。

たとえば、ノースリーから毎回打ちに行ってフォアボールは選ばないし打っても毎回単打の3割バッターと、打てばほとんどホームラン、フォアボールも選びまくる3割バッター、この二人が同じになってしまうのが打率です。ここまで酷いことは無いと思いますが、そのような可能性があることは頭の何処かに考えて置く必要があります。

打点とか勝ち星とかいったものに関してはもっと不条理で、ヒットは打つものの毎回運悪くランナー無しで回ってくる弱小チームの四番よりも、周りが打ちまくるせいで毎回ランナーがいる状態で回ってくる打者の方が明らかに有利ですし、勝ち星なんてのは自分が打たれまくっても打線がバカバカ打てば増えるし、去年のいつかのDeNAの高崎投手みたいに、自責点0失点2で尚且つ自分がヒットを打って1点とって8回まで投げたとしても打線が打てずに負けてしまえば負けになるというある意味論理的でない無茶苦茶な数字です。

このように、指標の妥当性という面からセイバーメトリクスな数字を批判するのは無理があります。結局は、打率とOPSなにがちがうのかっていうのは、見慣れているのかそうではないのか、ただその違いに尽きると思います。

例えば今一般によく用いられる指標としてセーブとかHP(ホールドポイント)がありますが、あれはつい最近まで日本球界には存在しませんでした。しかし先発完投型の試合構成であったのが、先発→中継ぎ→抑えという分業制へと移行していく段階で、途中で登板する投手の地位向上が図られ、中継ぎを評価する指標として導入されたのがセーブといった概念です。では、セーブが無い時代の抑えで活躍した選手に価値がないかというとそんなことは無いですよね。今の時代の人と同じようにチームの勝利に貢献しているはずですから、同じように評価されるべきです。しかし、その選手がいた当時にはそんな概念がありませんから、おそらくは先発投手に比べてかなり選手としての価値が低いとみなされていたでしょう。

このセーブやホールドポイントと同じように、今一般に普及している指標だけが万能で十分である、とは必ずしも言い切れないはずです。そのためいろいろな側面から選手を見てやる方法として、セイバーメトリクスがあるんだと思っています。打者指標のIsoDを見れば、どれだけフォアボールを選ぶ傾向があるバッターであるかが、投手指標の一つであるFipを見れば、守備の影響から独立してどの程度その投手が抑えることが出来るのかといったことをある程度客観的に判断できます。

従来指標が絶対だ!という立場を頑なに守ろうとすると、結果として現実を見ることができなくなる恐ろしさがあります。

この記事は http://www.fangraphs.com/blogs/a-response-to-bob-ryan/を読んで思ったことをつらつら書いた(というか多分に影響を受けてい書いた)のですが、あらためて物事を認知する難しさや主観の危うさを感じれた気がします。

さきほどの内容も、セイバーメトリクスの指標を使う時にそれが絶対だという立場にたてば結局おなじことになるわけで、そこは常に注意して行かないといけないところです。

I think telling an accurate story is more important than telling a comfortable one, and the reality is that the numbers that are commonly used generate stories that are factually incorrect. ........
We’re not replacing the “Holy Trinity” of baseball statistics because we can’t enjoy the game. We’re pointing out that these statistics breed false narratives, and we value the truth.
A Response to Bob Ryan http://www.fangraphs.com/blogs/a-response-to-bob-ryan/

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