2014年5月15日木曜日

ランナー二塁でのチームバッティング

今日の巨人対ヤクルト戦、5回ノーアウトランナー二塁、バッター比屋根の場面。このような場面で間違いなく実況が言うのが、「バッターは最低でもファーストもしくはセカンドゴロを打てるように流し打ちを心がけて欲しいですね」というコメントです。今日も解説の江川がそのようなことを話していました。

確かにライト方向へのゴロならば2塁ランナーはサードへ進めますし、もしサードやショートへの強烈な当たりであればランナーは動けず流れが悪くなるというのも一理あります。

しかし、当然それを見越してピッチャーも左バッターならばアウトコースへのストレート、右打者へならインコースへのチェンジアップなどを軸に流し打ちをさせない投球をしてくるでしょう。そのような流し打ちをしてヒットを打つことが難しい場面において、監督は無理に流し打ちを意識させる必要があるのでしょうか。

まず、ノーアウトランナー二塁と言う状況では平均的にどの程度の点数を得ることが出来るのかを確認します。以下の表は2013年のNPB全試合においてノーアウトランナー二塁の状況が発生した後得られた点数の平均値を表しています。

situation アウトカウント 得点期待値
2 0 1.022
これを見るとノーアウトランナー二塁は平均的に見れば1点取ったことと同義であると言えます。では次にこの状況から起こりうる状況変化を考えます。

ノーアウトランナー二塁で起こりうるものとして、四死球、シングルヒット、ツーベース、スリーベース、フライもしくは2,3塁へのゴロアウト、1,2塁へのゴロがありますが、今回は簡単のためスリーベースとホームランは考えないこととします。

バッターの結果による次の状況の得点期待値が次の表です

situation アウトカウント 得点期待値 差分
2 1 0.713 -0.309
3 1 0.873 -0.149
1-2 0 1.41 0.388
1-3 0 1.736 0.714
これを見ると思ったより1アウトランナー3塁の得点期待値がよろしくないです。ノーアウト2塁時よりも得点期待値はだいたい0.15点ほど減少します。当然1アウトランナー2塁のほうが低いのですが、くらべても0.2点以下の差しかありません。

一方もし打者がヒット、もしくはフォアボールを選べば得点期待値はぐっと上がります。フォアボールでも0.4点、ヒットなら0.7点分の価値です。ここには載せていませんが、ノーアウトランナー1塁での得点期待値が0.44であることを考えると、このシチュエーションでヒットを一本追加することは、ノーアウトでランナー無しの時に単打もしくはフォアボールを選ぶときに得られる得点期待値よりも1.7倍ほどの価値があることがわかります。

しかも、ランナー二塁で強打が成功しツーベースを放てば、1点獲得した上にその後の得点期待値は1.022のままですし、ホームランを打つ可能性も当然含まれますから、強打策は更に大きな得点寄与となることが予想できます。

以上のことから、長打が見込まれるバッターや、ライト方向への打球を打とうとすると打率や長打率の下がってしまう選手は、普通に打たせるべきだということが言えるでしょう。

今日の試合の場面ではバッターは比屋根ですから、長打は少ないし次の川端バレンティンで点を取れば良いと考えて右打ちを指示することは、それほど間違った選択ではないですし、むしろセオリー通りです。

しかし続く打者が川端、バレンティン、雄平ということは、裏を返せば打撃能力が高く大量得点が見込める場面であるとも言えます。また比屋根は右打者で、尚且つ今シーズン3割近い打率を誇り、打球方向は主に左に寄っています(http://baseballdata.jp/playerB/1100052.htmlによると33打席中ライトへ飛んだ打球はわずか4球です)から、比屋根はそこまで右打ちが得意であるようには見受けられません。したがって、右打ちを指示した時の打率が下がってしまう可能性は十分考えられます。

加えてヤクルトは現在救援陣の防御率が極端に悪く3点差程度であれば試合後半にひっくり返されてしまうというリクスがあります。以上のことを鑑みると、確実に1点を取るよりも強打で大量点を取ってトドメを指すという指示もありではないのか、と思ったりもします。

0 件のコメント:

コメントを投稿